私が家庭教師を始めたのは大学生の頃ですから、もう30年ほど家庭教師を続けているわけです。 その間、いろんな相談や質問を受けていきましたが、最も難しく、明解に答えることが出来ずに頭を悩ませてきた問題、それが国語の勉強方法についてです。 どうやったら国語の成績が上がるか、という問いに対して、私は長年曖昧な答えしかしてこなかったことを反省しています。 それでも国語を教える機会は近年増えており、いろいろ試行錯誤を繰り返してきましたので、自分なりの意見をまとめ、実際に効果のあった方法をここでしっかりご紹介しておこうと思います。

まず、国語の勉強方法に対する答え第1位は、「読書」だと思うんです。
ところが、そう言う人たちも、「どの本を、何冊読めばいいか」までは言及していませんよね。 なんとなく国語の力を伸ばすには読書が良いんだとは思っているんですけど、そこまでは踏み込めないんです。 これではちょっと説得力に欠けてますよね。  

国語力とは?

国語力とは、国語のテストでいい点数が取るためには、以下の3ステップで考えることが出来ます。

1
基礎国語力

①語い力、②漢字力、③基本的な文章読解力と作文力

2
文章読解力

小説や教科書の文章を読んで、理解することが出来る。

3
問題の解き方・テクニック

指示語や接続詞の考え方、設問に対するアプローチの具体的な方法

なぜ”国語の成績を上げるには読書がいい”と言われるかというと・・・

この(1)と(2)に含まれる①語い力、②漢字力、③文章読解力の全てが、読書によって確実に上がるからなんですね。
もう、子供たちが一生かかっても読み切れないほどの名著が既に存在していると言われています。 いろんな人のお薦めやレビューを参考に、興味のありそうな本から読書をスタートしてみると良いでしょう。 読書をして後悔した人は、人類史上まだ1人もいないでしょう。

それでは3つのステップをそれぞれ説明していきましょう。

(1) 基礎国語力

この基礎国語力がとても大事で、ここがしっかりしているかは最初に確認したいところです。
「せんせい、国語の問題の解き方のコツを教えてください!」と要望されることが何度かあったんですが、テクニックですぐに国語が出来るようになるなんてことは残念ながら起こりません。 それは最後に考えることで、順番を間違えてはいけません。 まずはこの基礎国語力を強化することに集中しましょう。 ①語いと②漢字は基本的な暗記力があれば頑張って身につけることが可能で、勉強すれば積み上がっていくものです。 ただ、③基本的な文章読解力は、既に備わっているはずのもので、訓練や勉強によって改善できるものでは無い場合がありますので注意が必要です。(注1)

(注1) 基本的な暗記力と文章読解力

(1) 基本的な暗記力
 覚えることが苦手な生徒は珍しくありませんが、極端に覚えられない、となると発達障害の1つ、学習障害の可能性があります。  現代では10人に1人は発達障害やそのグレーゾーンといわれることもあり、あまり気にしなくていいと思いますが、どういう特徴や傾向があるのか、ということについて把握しておくことは大事かなと思っています。
 ・覚えることの出来る量が結構少ない気がする。
 ・新しく覚えると、その前に覚えたことをどんどん忘れていく。
 ・忘れるだけでなく、覚えたことすら完全に忘れている。
 記憶のキャパシティ(器)がもともと小さい場合、その器が大きくならない限り、いくら頑張っても覚えること出来る量は増えません。
 また、目安となるのが、「興味の無いことでも頑張って覚えられるか」 です。
 勉強が好きな生徒は多くはありませんし、少なくとも何か1教科は苦手教科があったりするものです。 でも、”興味は無くても、テスト前なら頑張って覚える”ことを子どもたちは(仕方なくでも)やっています。 ポケモンなら600以上の名前を全て覚えていたり、駅名は大人が驚くほど記憶していたりしても、こと興味の無いことに関しては極端に覚えられない、という場合は注意が必要です。 例えば、出題される内容ががはっきり分かっているテスト(英単語テストや漢字テスト)で、かなり頑張って時間をかけて勉強してもなかなか合格できない場合などです。

(2) 基本的な文章読解力
以下気になることはないでしょうか。
 ・親子の会話でも意思疎通が難しいときがある。
 ・長い会話になると視線が逸れる。
 ・話したり、書いたりする文章が短い。
 ・冗談が通じず、真に受けてしまう。
 ・自分で文章を書くということが極端に苦手だ。
 ・友だちに誤解され、もめることが多い。
多少はどれか当てはまったりするものですし、気にすれば気になるものですが、これらの傾向が強ければ発達障害の1つ、学習障害の可能性があります。

 私は、発達障害やそのグレーゾーンの生徒さんとも数多く接してきましたが、今強く思うのは、「子どもは悪くない」ということです。 子どもは、お父さんや母さんをがっかりさせたくないと思っています。 でも、どうすればいいのか、何をやれば改善していくのか分からないのです。 その具体的な方法を教えてあげられないまま、ただ「頑張れ!」と言うだけでは、子どもには酷なように感じています。 お子さんの人生はこれから何十年も続きます。 かわべ家庭教師学院では、今からのベストを保護者やお子さんと一緒に考えていきたいと思っています。 お気軽にご相談ください。

『新しい言葉ノート』

①の語い力をアップするのにお薦めの方法が、この『新しい言葉ノート』です。 私が国語の家庭教師をしている生徒さんも、このノートを作っています。
国語の問題を解いたときだけでなく、日常生活の中で知らない言葉、よく聞くけどいまいち意味が分からない言葉を、「まぁいいか」と思って通り過ぎてしまうのではなく、
「あっ!これ知らない言葉だ!」
と思って、逃さずにこのノートに書き留め、意味も調べて書き込み、自分だけの『新しい言葉ノート』を作っていきます。 この『新しい言葉ノート』を作っていくと漢字力も付きますし、何より新しい言葉に対する積極的な姿勢が自然に身に付くのもとっても良いことだと感じています。

『新しい言葉』ノート

(2) 文章読解力

国語力は、他の教科にも影響するってよく言われますよね。
数学の文章題が苦手なのは国語が出来ないからだ、とか。
設問の意図を誤解して、的外れな解答を書いてしまう、とか。
この文章読解力を付けるには、もちろん読書も効果的ですが、それ以外にオススメの勉強方法が要約の練習です。 あるまとまった文章を要約する練習をすると、はやく正確に読める力や、分かりやすい文章を書く力も身についていきます。

要約の演習

要約の練習といっても、やり方も分からないし、やったこともなければ、やる気が出てこないですよね。 少し説明します。

要約の原則・手引き

1. 要約した文章は、頭の中だけでなく必ずノートに書いてみる。 
2. 「です」「ます」は、「だ」「である」のような言い切りの表現に変える。
3. 比喩、具体例、理由は出来る限り書かない。
4. いつも主語と述語を意識して文を書く。
5. 小説の場合は、友達に説明するつもりで本文を見ずに書いてみる。(登場人物名のみメモしておいて、本文を書き抜かない。)

要約する文章は、新聞のコラムや国語の問題集の問題など何でも良いです。
そして要約したら、書いた文章を是非誰かに見てもらいましょう。 それが要約になっているのか、相手に伝わる文章なのか、第三者の意見を聞くことはとても重要で参考になるはずです。 家庭教師でもこの要約演習を積極的におこなっています。

国語のプリント(小学生向き)

こちらのサイトでも、小学生向けのプリントがダウンロード、印刷できてオススメです。
中学生の基礎固めにも十分使え、私も指導の中で使わせてもらっています。
ちびむすドリル
この中にある小6文章問題【小説5】は、登場人物を、家庭教師をしている生徒とそのお母さんに置き換えて説明したところ、とても盛り上がって楽しく学習できました。 シチュエーションが想像できて親近感が湧けば、グッと理解が深まるんだなぁと感じたとても印象深い文章です。

(3) 問題の解き方・テクニック

国語の入試問題では読んだことのない文章を前提にしなければいけませんから、どんな文章でもある一定の解き方で臨めるように準備をしておくことは重要です。 ただ、逆接の接続詞「しかし」の後が重要だとか、指示語の考え方”書き抜きなさい”はラッキー問題!だとか、よく出てくる単語などをマークしていく、なんていうのは、小さなテクニックでそれだけで問題が劇的に解けるようになるものではありません。それはあくまで1つの解き方や考え方で、当然マークすることが目的ではありません。 目的は、”正しく読む”、これに尽きます。 その為には、繰り返しになりますが、語い力などの基礎国語力や文章読解力が大切で、それに向かってプラスになりそうなことを粘り強く積み重ねていくことが重要です。

定期テストの国語対策

実は、定期テストの国語対策っていうのは、今までお話ししてきたことと少し違う側面を持っています。 なぜなら、定期テストの国語は必ず読んだことのある文章について出題されるからです。
定期テストで毎回90点以上とっている生徒に聞いたことがあります。
「国語っていつも点数良いけど、何してるの???」
「せんせい、国語は暗記だよ!
みんな国語の勉強しないから、おいしい教科だよね!
私は、ワーク(教科書に合った問題集)をテスト前に最低7回はやる。
それで全部覚えちゃう。」

凄いことを言うもんだなと。 7回もやったら、確かにかなり覚えちゃいそうです。 初めて聞いたときは、衝撃で言葉を失いましたね。 そんなに言い切れるほど自信があるんだなと。 ただ、その生徒の意見はそんなに間違って無いかなと思っています。 それで定期テスト対策は万全に近いでしょうし、本当の国語力を付ける上でもあながち無駄だとは思いません。 一文一文を精読することにもつながりそうですから、国語のテストで点数を取りたい!という生徒さんは一度やってみると良いでしょう。

最後に

時代は急速に変化していて、激動の時代と言ってもいいでしょう。 ファーストフード、インターネット、Wi-Fi、SNS、ファストファッションなど殊更スピードが重視されている時代とも言えますが、スローメディアの代表と言える”読書”は、いつも時代においても知的トレーニングの王道であると思っています。 生き難い時代だと感じる子供たちにとっても、静かに語りかけてくれる本が思いがけず助けになってくれることは珍しくないでしょう。 私自身も何度となく助けられました。 最後に、我が子や私が接している子どもたちに、何かのタイミングで、机の上にそっと置いておきたい本をお薦めして終わりにします。

中学生にオススメしたい本 6冊

・きみの友だち/重松 清(著)
・カラフル/森 絵都(著)
・GO/金城 一紀(著)
・ミライの授業/瀧本 哲史(著)
・君たちはどう生きるか/吉野 源三郎(著)
・13歳からのアート思考/末永 幸歩(著)

高校生にオススメしたい本 6冊

・かがみの孤城/辻村 深月(著)
・逆ソクラテス/伊坂 幸太郎(著)
・翼 cry for the moon/村山 由佳(著)
・自分の中に毒を持て/岡本 太郎(著)
・ビジネスマンの父より息子への30通の手紙/G・K・ウォード(著)
・大きな嘘の木の下で/田中 修治(著)

大学生にオススメしたい本 6冊

・君の膵臓をたべたい/住野 よる(著)
・道ありき 青春篇/三浦 綾子(著)
・さぶ/山本 周五郎(著)
・独立不羈/天毛 伸一(著)
・人を動かす/D・カーネギー(著)
・嫌われる勇気/岸見 一郎(著)

かわべ家庭教師学院
学院長 川辺 健一郎